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最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)348号 判決 1966年4月26日

上告人

大伴農業協同組合

右代表者

西尾順二

右訴訟代理人

南利三

南逸郎

被上告人

伏見義治

(ほか二名)

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人南利三、同南逸郎の上告理由第一点について。

論旨は、上告組合から被上告人伏見に対する本件金員貸付が組合員でない者に対してなされたことを理由に無効であるとした原審の判断は、事実誤認、審理不尽の違法を犯し、または農業協同組合法九九条、協同組合による金融事業に関する法律四条、八条に違反したものであるという。しかし、原審は、右金員貸付が組合員でない者に対してなされたことのみならず、上告組合代表理事であつた被上告人堀井も右貸付が上告組合の目的事業とは全く関係のないものであり、従つて、右貸付が組合定款に違反することを承知して貸し付け、また被上告人伏見も右事情を承知してこれを借り受けたものであつて、右貸付が組合の目的範囲内に属しないことが明らかであることを理由に、右貸付が無効であると判断しているのであり、原審の確定した事実関係のもとにおいては、右判断は是認するに足りるところである。論旨引用の当裁判所判例は、本件と場合を異にするものであつて、本件に適切ではない。論旨は、ひつきようするに、独自の見解に立つて、原判決を非難するに帰するものであつて、採用することができない。

同第二点について。

論旨は、上告組合と被上告人伏見との間の本件貸付行為が有効であることを前提とするものであるところ、右貸付行為が無効である旨の原審の判断が正当であることは、前記第一点に対する判断に説示したとおりであり、従つて、所論は前提を欠くに帰するものであつて、採用するに由ない。

同第三点について。

論旨は、上告組合の主張立証を検討すれば、被上告人堀井の保証にかかる被担保債権が上告組合の被上告人伏見に対する不当利得返還債権であつたと解すべき余地があるのに、この点につき審理を怠つた原審には、審理不尽の違法があり、また、本件保証ならびに抵当権の各被担保債権を単に請求の趣旨の記載のみに基づいて判断し、これを混同するにいたつた原審には、理由そごの違法があるという。しかし、原審は、上告組合の本訴請求の趣旨のみならず、その主張するところを仔細に検討したうえで、上告組合が、結局、被上告人伏見および同高橋の上告組合に対して負担する原判示消費貸借契約に基づく借受金債務のうち二四〇万円について被上告人堀井が保証をなし、さらに右保証債務を担保するため同被上告人において上告組合との間に自己所有の原判示物件につき抵当権設定契約を締結した旨を主張して、右保証債務の履行および抵当権設定契約に基づく登記義務の履行を求めているものと解し、その挙示の証拠により、被上告人堀井の右保証が被上告人伏見の原判示消費貸借契約上の債務を担保するためになされたことを認定し、右消費貸借が原判示の理由により無効である以上、右保証もまた無効であり、従つて右保証債務を担保するためなされた右抵当権設定契約もまた無効であると判断していることが明らかであり、右認定判断の過程に所論審理不尽、理由不備の違法は認められない。被上告人堀井の上告組合に対して負担する保証債務は原判示不当利得返還債務を担保するためであつた旨の論旨は、上告組合の主張立証についての誤つた判断に基づくものである。

従つて、論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 五鬼上堅磐 柏原語六 田中二郎 下村三郎)

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